余剰空間の地域への開放「みずき野デッキ」

みずき野デッキ

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茨城県守谷市みずき野は1980年代を中心に開発されたニュータウンであり、現在では少子高齢化が進んでいる。その中央に大きな公園と集会場がある。敷地は集会場裏にある不整形な敷地であり、竣工当時からゴミ置き場として使われた。その一方で地域の中央にある公園の通りと子どもたちが遊ぶアスレチックに面する場所でもある。みずき野町内から集会場のための専用デッキをつくってほしいと依頼を頂いたのが始まりである。

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集会場の専用のデッキという要望であったが、我々は子どもからお年寄りまで誰でも使える地域に開かれた場が必要であると考え、今回の提案を行った。自由に出入りできる明確な領域をもたない建築が相応しいと考え、樹木に寄り添いたくなる感覚と同じように、壁が林立し、壁を手掛かりにゆるく場が形成される建築の形式を提案した。35度に傾いたルーバーは木陰を生み、夏場でも涼しい場所となる。

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壁は、アルミの角材50×3で柱と横材を組み、構造用アルミ板2mmを溶接して固めたものに、仕上げとなるコ型に曲げたアルミ板t2を両側から被せ、幅450mmの壁パネルとして現場に搬入した。同様に、屋根ルーバーも、両端にアルミのFBを溶接し、工場で1m程度にユニット化した。このように、すべてのパーツを、職人一人で運べるサイズと重さにすることで、足場を組まず、脚立のみで、建方を一日で終えることができた。

アルミパネルは、防錆のためアルマイト処理が必要であったが、一般的な方法だと映り込みが無くなってしまうため、処理時間を短くし、溶け込み厚を少なくすることで解決した。その分傷がつきやすいので、保護のためクリア塗装を施している。その結果、ひと・樹木・空などの周囲の情景を移しこむ柔らかな壁となった。ひとの溜まりや視線の抜けなどによって配置を決めた壁によって、適度に囲われる心地よい場が生まれている。

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35㎡の小さな半屋外であるが、自然やひとのアルミの映り込みは優しく、アルミ特有の軽快さと緊張感のある空間となった。材料の特性や工法、構造が建築の形式や空間に直結し、住民の新しい集いの場を実現した。高齢化の進んだみずき野の地域住民の関係や街や自然の風景を再編し、次の世代へとの新しい物語を紡いでいく、そのような建築になることを期待している。

建築概要
所 在 地:茨城県守谷市みずき野 みずき野集会場
設計期間:2012年4月~2012年5月
工  期:2012年6月~2012年7月
構造規模:アルミ構造 梁のみ鉄骨
敷地面積:45㎡
建築面積:35㎡
設計監理:青木公隆 金田泰裕
施  工:株式会社プロテック/有限会社中村建設